情報機器の発達等により、日常生活で「手書き」する機会は減っています。小学校でも、1人1台端末が整備され、教室では、大人顔負けのタイピング技術でPC端末を使いこなす子どもたちの姿が見られます。今や、文字を書くために、「手書き」以外の方法を選択できる時代となりました。一方で、「手書き」する機会が減っているからこそ「印刷文字より個性や思いが伝わる」「タイピングよりも脳が活性化する」など、様々な点から「手書き」の価値や意義も見直されてきています。そのような中、日本の「手書き」文化を象徴する「書写」の授業は、国語科として各学年年間30単位時間程度の実施が求められています。では、今の時代において、どのような書写学習が求められているのでしょう。
①学習者自身の字を生かす
これまでは、手本の文字を反復練習し、教師が添削、最後に清書するという「習う」形式での学習がよく見られました。いかに手本の文字に近づけて書けるかが重視され、「手本の文字」自体が学習内容でした。しかし、今、求められている学習内容は、字形や動作など、どの文字でも応用できる「原理・原則」です。授業では、学習内容の理解と共に、「試し書き」で学習者が自分の字を認識します。そして、理解した学習内容を自分の字に生かせるように練習をします。さらに、その成果を同じ原理・原則を持つ他の字に応用したり、日常生活に生かしたりしていきます。学習者自身が自分の字を通して、主体的に「学ぶ」ことが求められています。
②硬筆と毛筆の関連的な指導の充実
小学校3年生からは、毛筆を使用した学習が始まります。また平成29年告示小学校学習指導要領では、低学年に水書用筆等の使用が示されました。どちらも、筆を使うこと自体が目的ではありません。筆を使って大きく書くことで、止め、はね、払いや字形が理解しやすくなり、硬筆による書写の能力の向上につながります。毛筆学習は、硬筆学習を補うものと捉え、学習過程の中で関連付けて取り入れていく必要があります。
③教室掲示は何のため?
多くの学校では、教室の後ろに毛筆作品が掲示されているのではないでしょうか。先に述べたように「毛筆学習は硬筆学習を補うもの」「理解した原理・原則を他の字で応用していく」と考えると、毛筆の授業で書き上げた字は、清書作品ではない、とも言えます。また、同じ文字が一斉に貼られることで、個人差が目立ち、書くことに自信を失う子もいるかもしれません。その反面、掲示することで新たな学びもあるかもしれません。「何のために」掲示をするのか、一度立ち止まって考えてみることも大切です。