現行の学習指導要領に、「道徳的価値の自覚及び自己の生き方についての考えを深め、道徳的実践力を育成するものとする」と記されている道徳教育は、「道徳の時間を要」とすることが求められています。
道徳の時間には、ほとんどの学校で副読本が使われていると思います。友情・郷土愛などをテーマに教材が作られ、話し合いながら学べる工夫がされている副読本は使いやすく、私も小学校教員時代には活用していました。が今回は、教材として絵本や紙芝居を使いませんかという提案です。
まず、絵本として出版されている教材は、実際の絵本を使いましょうという例です。
優しいことをひとつするとひとつの花が咲く…とやまんばが語るこの絵本は、滝平二郎の素晴らしい切り絵とともに、長く読み継がれてきました。副読本にも多数取り上げられています。ですが、30ページの絵本が教材では6ページ程度に、絵も少なくなり縮小され、感動が半減してしまいます。
立派なお墓を持ち、ご先祖さまを敬う沖縄のひとたち。お父さんにお母さん、おじいさんにおばあさん、ひいおじいさんにひいおばあさん…命のつながりがあって今の自分がいるんだと知る男の子が主人公の絵本です。この絵本の圧巻は、折り畳んでおさめられたページが、上へ上へと伸び、命のつながりを視覚化した場面です。ところが副読本ではそのようなページには作られていません。
この二冊の絵本は、学校図書館に入っていると思うのですが、無かったら購入を希望してでも見てください。まだ他にもこのような例があることでしょう。今使用している副読本を、このような視点で見直してみてください。
次は教材の差し替えの提案です。
例えば「友情」をテーマに考えさせたいとき、教材文ではなく、友情を主題とする絵本と差し替えてしまうのです。
などです。
次号では、道徳の時間におすすめの本と、紙芝居について紹介します。
東京学芸大学デジ読評価プロジェクト特命教授
對崎奈美子
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