Vol.173特別支援学校における学習評価-学習評価の土台を考える

2024.01

●学習評価は何のために?
 特別支援学校と一口に言っても様々です。幼稚部から高等部までの子どもたちが一つの校舎で学ぶ特別支援学校もあれば、様々な障害部門が集まっている特別支援学校もあります。

 それぞれ違いはあれど、特別支援学校で共通して行われている営みの一つとして授業があります。皆さんは何のために授業をしているのでしょうか。様々な考えがあるかと思いますが、学習指導要領の言葉を借りるのであれば「未来の作り手になるための資質・能力を育むため」といった答えもありそうです。
 授業を行う上で各教科や領域での学びをどのように組み立てて、評価していくかといった点も重要です。詳しいことは令和2年に文部科学省から出されている『特別支援学校小学部・中学部学習評価参考資料』を参考にしていただくと良いと思います。

 学習評価といった点について述べるのであれば、学習評価は子供たちの学習状況を評価するものであるとともに、教育課程や学習・指導方法の改善や一貫性を振り返るといった点にも大きな効果があると考えます。学習評価は、教員の省察、力量形成を促すものとしての役割が大きいでしょう。

●学習評価の土台
 特別支援学校の授業は、チームで行うことが主です。一つの授業(単元)に入る前に、何人かの先生が集まって授業の目標や展開、教材の選定や評価場面などを話し合っているのではないでしょうか。(特別支援学級等も同様だと思います。)

 この話し合いが特別支援学校の文化とも言えるかと思いますが、改めて振り返ってみてください。皆さんは話し合いの場で自分の考えを率直に言えているでしょうか?経験年数や自分の専門教科等から、「これは初任者の私が言うことじゃないかな」「専門教科が体育だから国語のことはちょっと・・・」「担任の先生がああ言っているなら仕方ないか」といったように、思っていることを言えなかった経験はないでしょうか?特別支援学校に通ってくるお子さんの多くはユニークです。得意不得意がはっきりしていたり、発達がゆっくりだったりするお子さんも少なくありません。そういった子供たちの成長や良さを捉え、自分たちの教育活動をアップデートするためには先生方の多様な意見が必要だと感じます。そういった多様な意見の中から自分には見えていなかった子供の姿や指導の躓きなどが見えてくることがあります。

 チームの皆が恐れなく意見を伝え合える環境づくりも学習評価を考える上では大切な観点になるでしょう。チームの皆が恐れなく意見を伝え合えることを「心理的安全性」といった言葉で表現することもあるようです。紙幅の都合上「心理的安全性」についてはこれ以上触れることはできませんが、学習評価を考える上で、意図的にチームの心理的安全性を担保する行いも私たちには必要になるでしょう。

北海道室蘭聾学校
髙津 直人
【参考文献】
文部科学省(2020)『特別支援学校小学部・中学部学習評価参考資料』
https://www.mext.go.jp/content/20200515-mxt_tokubetu01-1386427.pdf
文部科学省(2020)『新学習指導要領の全面実施と学習評価の改善について』
https://www.mext.go.jp/content/20201023_mxt_sigakugy_1420538_00002_004.pdf
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