東日本大震災から、間もなく6年となります。被災地の学校では、直後から子どもたちのために必死に教育活動の再開に取り組んできました。私は2011年5月に宮城県と福島県を訪問して被災した学校を見るとともに、校長や教員、教育委員会の方の話を聞いてきました。以降2011年は7月、8月、9月、11月に、翌年からは毎年学校図書館研究大会に参加してきました。訪問を通して、教育に携わる方々の「災害を乗り越え子どもたちを守る」という熱いを、私はいつも心に受け止めてきました。
本来は2011年秋に、東北地区学校図書館研究大会が福島市において開催される予定でした。大会に向け活発に授業研究が行われていましたが、大会開催は断念せざるをえませんでした。しかし、研究は続けたいと、震災から半年経った9月には研究授業を実施したのです。窓を開けられず蒸し風呂のような教室でしたが、6年生の児童が課題に集中して取り組む姿を見せてくれました。
その福島県から原稿を寄せていただきましたので、紹介します。
東京学芸大学デジ読評価プロジェクト特命教授
對崎奈美子
福島県学校図書館協議会は今年65年目を迎えました。
本会は、福島県の小・中・高等学校約700校が加盟している教育団体で、全県下にわたり活発な活動がなされています。主な事業として、読書感想文集の発行、学校図書研究大会の開催があります。
研究大会は年1回10月から11月に、学校図書館指導に関わる司書教諭、学校司書等が一堂に集まり、学校図書館教育の充実や学校図書館運営の活性化を図ることを目的として開催されます。17の支会がローテーションを組み開催しており、今年度は浜通り地方のいわき支会が開催地となりました。大会主題を「未来を拓き、豊かな学びの中核となる学校図書館」として、いわき市立内町小学校、内郷第二中学校、いわき市文化センターを会場に、授業研究会、授業分科会、研究重点の分科会、講演会を実施しました。前年度の北地区伊達大会から授業研究会を取り入れ、学校図書館を積極的に活用していく授業のあり方を研究推進してきましたが、この取り組みは今年度のいわき地区大会でも継承され、学校図書館を活用した授業が数多く実践されました。
小学校では、「親子読書会(学級活動)」「語彙力を高める授業(国語)」「宮澤賢治の見方・考え方について子ども自身が考えを深める授業(国語)」が展開されました。中学校では「豊かな表現力を育み、学びを支援する学校図書館活用のあり方について」の実践報告とともに、幼・小・中学校連携の地域をつなぐ教育として「中学生から幼稚園生への絵本の読み聞かせ」が行われました。いわき市では学校司書の配置を推進しており、司書教諭と学校司書が共に授業作りをして授業実施していました。いずれの授業も、読書の楽しさや言葉の持つ力について子どもたちに感得させる素晴らしい実践でした。 前年度の伊達大会でも、学校司書が選定した図書教材や図書館を使った授業が展開され、学校司書の配置がもたらす効果が十分に実感できる授業となっていました。また、デジタル教材の活用もなされ、多種多様な学習材が授業を魅力的なものにしていました。
これら65回続く研究大会は今の教育課題を学校図書館教育の視点から捉え、教育効果をあげてきました。現在は図書館の蔵書はもちろん、デジタル教科書・教材も授業に活用され、デジタルコンテンツから瞬時に検索し、必要とする情報を選択する調べ学習も実践されています。図書館等にこれらの教材が整備充実されていくことは必須であり、研究大会においても今後、研究課題の一つとして推進していく内容であると考えています。
現在、郡山市3校と白河市1校の小学校4校が、デジタルコンテンツ活用のモデル校として研究を推進しています。特に郡山市は平成27年9月に全小・中学校にタブレットが整備され、授業で積極的に活用されています。これらデジタル機器が整備された機会にデジ読評価プロジェクトの支援を受け、デジタルコンテンツとデジタル新聞が配信され、全教科にわたり活用の幅が広がり、一層授業が活発化しているところです。平成32年度から施行される新学習指導要領が目指す「主体的・対話的で深い学び」の視点からの学習を展開するには、デジタルコンテンツは効果的な教材・教具として学校現場に取り入れられ、ますます活用法の研究は推進されていくものと思います。
東日本大震災から間もなく6年が経過します。震災後、全国から福島県へ様々なご支援をいただき、子どもたち・教職員はこれらを心の支えにして教育の復興再生を目指し、教育活動を行ってきました。蔵書の支援も多くいただき、本が心の寄り所となりました。避難している子どもたちにとって、本はもちろん、インターネット等の通信機器も、ふるさとの友や家族と繫がる大切な手段となりました。今後、デジタルコンテンツは生涯学習の学びのツールとしての機能を果たしていくものと思います。