Vol.195カリキュラムって何だろう? 立ち止まって考えてみよう

2025.06

 カリキュラムと聞いて何を思い浮かべるでしょうか。年間指導計画や教育課程のことでしょうか。確かにこれらもカリキュラムの一つです。ナショナルカリキュラムという言葉があるように、日本の学習指導要領もカリキュラムにあたります。これだけでも、カリキュラムの意味は意外と広いことが分かります。

 それでは、カリキュラムの語源から考えてみましょう。カリキュラムの語源について、佐藤(1996)は「ラテン語の『走路』を語源とし『人生の来歴』を含意する言葉」と述べています。(1)つまり、カリキュラムという言葉は、今まで学んできたすべてのことを含んでいるのです。

 カリキュラムを児童・生徒が今まで学んできたすべてのことという視点から考えてみます。カリキュラムの一つである年間指導計画は、児童・生徒に何を教えるかという教員からの視点でつくられています。ですが、年間指導計画に書かれていることは、児童・生徒にすべて学ばれているとは限りません。教員が教えたことは、児童・生徒の解釈の仕方によって教員の意図しない理解をされているかもしれません。さらに、児童・生徒が学んできたことは教科の内容だけではありません。ヒドゥン・カリキュラム(潜在的カリキュラム)という言葉があるように、児童・生徒は環境や人間関係からも無自覚的に知識や行動様式を学んでいます。

 新学習指導要領になって、カリキュラム・マネジメントという言葉が広く使われるようになりました。カリキュラムという言葉の本来の意味を考えると、教員の視点からだけでなく、児童・生徒が学んできたことから教育課程を考えることも大切だということが見えてくるのではないでしょうか。特に、児童・生徒の興味・関心が深く関わる探究的な学習は、彼らの経験を共有しつつ、より広い視野から捉え直すことが必要だと思います。

 今回、カリキュラムという言葉の意味を問い直すことで、児童・生徒が今までに学んできたことからカリキュラムを考えるという視点を得られたように思います。漠然と理解していた言葉も、一度立ち止まって考え直すと新たな発見があるかもしれません。ぜひ、立ち止まって考えてみてください。

静岡県立裾野高等学校
橋本 洸
【参考文献】
1 佐藤学(1996)「カリキュラムの批評 公共性の再構築へ」世織書房P4
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