Vol.130子どもに寄り添った授業デザインを

2021.7

 「授業中、外をずっと見ている。」「飽きた様子で席を立ってしまう。」「理解しているか反応がわからない。」普段の教室での指導中、子どもたちにこのような様子がみられることはないでしょうか。
 私はこれらの行動は、学習についていけていないサインだと考えています。こういったことが起きにくくなるように、私は3つのことを意識して授業をデザインしています。

➀授業の焦点化
 1時間の授業の中で、子どもたちが理解すべきことを1つに絞ります。例えば国語における物語教材なら、情景描写による心情を理解することだけをねらいとします。いくつかの情景描写を取り出して比べ、心情理解のみに焦点をあてて授業を行います。
➁授業の視覚化
 子どもたちが視覚的に理解できるようにすることを心がけています。算数の文章題を一緒に読み、図にしてみたりイラストにしてみたりしてから考えるのも効果的です。
③授業の共有化
 隣の子に説明してみるなど、対話活動を取り入れます。ペアで一つのことを考え、答えを共有したり、相手に自分の考えを説明したりする活動を頻繁に取り入れながら学びを共有することを意識します。子どもたちの授業の参加度が高まり、理解度もあがると考えて行っています。

 以上3点を意識して授業をデザインすることで、学習につまずきやすい子どもをクラス全体で支援することができると考えます。

 しかしながら教育はHOW TOでは語れません。しっかりと計画を立ててアプローチしても、うまくいかないこともあるでしょう。みなさんは、「ショート・ターム」という映画をご存じでしょうか。デスティン・ダニエル・クレットン監督が2013年に撮った、アメリカのグループホームのお話です。
 心に傷を負ったティーンエージャーたちとその施設で働くスタッフとのかかわりでとても好きなシーンがあります。ある出来事があり、ふさぎ込んだヒップホップをこよなく愛する少年マーカスに、スタッフであるメイソンがとった行為は、ただ寄り添うことでした。何か言葉をかけるわけでなく、マーカスが自分の嫌な気持ちを吐き出すようにラップをしている横で、ただ太鼓をたたき、寄り添う。慰めや、言葉かけではなく、マーカスの横にいることで二人の心が通じるシーンに大変心を打たれました。
 教室での子どもたちへの向き合い方も、同じだと考えます。メイソンがマーカスにしたようにただ寄り添ってあげてください。子どもたちの気持ちを聞いたり感じたりして、支えてあげることが一番大切であり、そこからが支援のスタートであると考えます。

千代田区立九段小学校
加藤祐輔
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