前回は、縄文時代について、学んだことを元に「法や決まり」を考えることで、その時代の価値について思考判断するという授業を紹介しました。そして、この「法や決まり」をテーマとしていくには、この視点を積み重ねていくことが重要です。
そこで今回は、前回とは逆に「法や決まりからその時代のイメージを深める」授業について紹介させていただきます。
江戸時代の学習は、まず参勤交代など幕府の支配体制を取り上げ、そのあとに、商人文化や蘭学の発展、百姓の暮らし、その後に黒船来航というのが一般的です。その百姓の暮らしについて学ぶ時間に、「『法や決まり』として幕府から百姓に出されたものはどれでしょうか」という問いとともに、条文(一部抜粋)を子どもたちに提示しました(資料)。
それまで子どもたちは、幕府の厳しい大名支配などを学んできており、また、いわゆる「慶安のお触れ書」からそうした支配は百姓などにも及んでいると考えがちでした。
そのため実際の授業では、特に(9)について「幕府は農民に財産は必要ないと考えているのではないか」(杏さん)、「農民を従えようとしてる幕府にとって、財産は反乱の原因と考えるのではないか」(丸男さん)というように、(9)を幕府から出されたものではないと考える子どもが多かったです。
結論としては全て幕府が出したものなのですが、そこからは、苛烈な支配者としての幕府だけではなく、百姓の生活や自立を支えつつ支配のシステムを続けていこうとする、現実的な為政者としての姿も見えてきます。しかし、一方で身分制度が明確で、生まれた家の仕事を継いでいくシステムがあったり、身分に課せられた法や決まりを逸脱すると厳しい罰(一揆などの首謀者は必ず死罪)が課せられるたりするなど、「身分に縛られた平和な時代だった」という見方もできます。
このような学習を通して、自分が望む社会はどのような社会なのか、そうした未来の社会のあり方について思考判断する力も育っていってほしいと思っています。