私が教職現場に立った2010年代、授業の形態は一斉授業しかありませんでした。全員が黒板をまっすぐ見つめ、画一的で無機質な授業が繰り広げられていました。ところが現在では、様々な授業においてグループワーク(ペア活動を含む)が行われています。
日本においてグループワークが積極的に取り入れられるようになった経緯は、2012年の中央教育審議会の答申で「アクティブラーニング」という言葉が取り入れられたことや、2017年に告示された学習指導要領において「主体的・対話的で深い学び」という表現が使われたことに起因しています。グループワークは、これらを実現するための代表的な手法の一つです。さらに遡ると、ヴィゴツキーの「発達の最近接領域」の考え方とも関係が深いです。
一人でできないことでもグループメンバーとの対話や協働を通じて課題解決に向かうことができます。グループワークには今自分にはない世界へと導いてくれる力があるのです。私が担当する理科においては、昔から実験の際にグループワークが使われてきました。そこで、理科におけるグループワークをうまく進めるためのポイントを話してみたいと思います。
(1) 実験は2人組で効率と学びを最大に
実験のグループ編成は、学習効果に大きく影響します。個別、2人組、4人組を比べた結果、私は2人組が最も効率的で、深い議論を促すという経験と知見を得ました。少人数だからこそ役割が明確になり、協力することで責任感が生まれるのです。4人組だと実験に関係のない会話が増えますが、2人組だと効率よく作業が進み、短時間で実験を終えることができます。同時に、「なぜこうなるのか」といった実験内容に関する活発な対話も生まれやすく、実験内容を深めることができます。
(2) グループでの観察から始める探究学習で知的好奇心を刺激する
教科書通りの実験は「結果の確認」に終わりがちで、科学の楽しさを感じにくくなることがあります。そこで、私はグループでの観察から始めることをお勧めします。身近な題材を用いて、感じたこと、気づいたことを言っていき、「なぜだろう?」と疑問を持ってもらうのです。例えば、グループで一輪の花を観察してみます。「花は真ん中から雌しべ、雄しべ、花弁、がく」「葉が緑」「葉から枝が分かれている」などの意見があがることが予想されます。1人では見過ごす点もグループで意見を出し合うことで、多くの気づきが生まれます。それに対して「なぜだろう?」を考えられれば、そこが探究・実験のスタートです。
(3) 理科室をグループワークの拠点に
理科室はグループワークに適した環境です。広々とした机が向かい合わせに配置され、通路も広く、教師も生徒も自由に動き回り、グループ間の活発な交流が生まれて学びを共有しやすい環境です。また、理科室は理科以外の教科で使うことはないはずです。それならば、図鑑や科学雑誌、興味を引く標本などを常設し、生徒の知的好奇心を刺激しましょう。「なんだ、これ?」「不思議だ」といった感情をグループで共有し語り合ううちに、理科室が学校における非日常となり、ワクワクが生み出される場になります。理科室を単なる実験室としてではなく、座学の拠点として活用することで、理科教育の可能性が広がります。
これらのポイントを授業に取り入れることで、理科の授業が単なる知識の伝達にとどまらず、生徒自らが考え、対話し、探究する場へと変容していきます。皆さんの経験と知見も踏まえて、知的好奇心を育む授業を展開していきましょう。