読み書きに困難さがある子への支援は、3つの視点から進めていくことを大切にしています。
1つ目の視点は「内容へのアクセスの保障」です。学年相応あるいは知的好奇心に合った内容に触れる機会を保障し、内容について、理解したり考えたりすることに繋げる、という視点です。文字を音声化しながら進める場合と、文字(見た目)に工夫を加えて自分で読ませながら進める場合とに大別されるかと思います。
文字を音声化する例としては、デジタル教科書の読み上げ機能はイメージしやすいでしょうか。ここ数年、タッチペンが読み上げる音声付教科書も認知されてきました。
自分で読むと数行で諦める子も、音声化することで最後まで聞く、ということも珍しくありません。
文字(見た目)に工夫を加えて自分で読ませる例としては、UD教科書体などへのフォントの変更、拡大提示、意味ある区切りへのスラッシュの追加、読んでいる箇所が分かるようなリーディングルーラーの使用(図1・2参照)などが挙げられると思います。
2つ目の視点は「多様な表現ツールの保障」です。紙と鉛筆で表現できる場合はそのままでもよいと思いますが、そうでなければ、音声入力であれ、フリック入力であれ、考えたことや感じたことを存分に表現できるツールを探し、活用を促す、という視点です。
紙と鉛筆を使うと1~2行で諦めてしまう子でも、機器を使うことで、同じ時間に4~5倍表現できることもあります(図3参照)。
3つ目の視点は「読み書きの正確さを高める」です。1文字ずつ、単語単位、文単位での読み書きの正確さを高める学習をコツコツと続ける、という視点です。
方法は読み書きが困難な背景によって変わってきます。
音と形との結びつきが弱い場合は、「たこやきの、た」「ラーメンの、ラ」のように、ご本人にとって馴染みのある言葉を使った方法や、イラストと漢字をセットにしたカードの利用などは、意味が添えられることで、形と音との結びつきを支えます。
形を捉えることに弱さがある場合には、形の違いを言葉にする方法を用いることもありますし(図4参照)、目と手の協応動作に弱さがある場合には、筆記具を変えたり、書きやすい大きさのマスを探したりすることもあります。
これら3つの視点での支援が、相互に良い影響を与えながら進むことは、読み書きが困難なことが招いてしまう、語彙獲得の伸び悩み、自己肯定感の低下など、様々なリスクを軽減していくことに繋がります。
ある子に合う方法が別の子に合うとは限りません。 大切なことは、試みた方法の結果を見極めながら、適宜、方法を変更していく柔軟さだと考え、日々、試行錯誤しています。