1.はじめに—学習指導要領とメタ認知
『中学校学習指導要領(平成29年告示)』は、知・徳・体にわたる「生きる力」を生徒に育むため、全ての教科等の目標や内容を三つの柱で整理しています。その柱の一つに「学びに向かう力、人間性等」があります。ここでは「学びに向かう力、人間性等」に含まれる「「メタ認知」に関わる力」(『中学校学習指導要領(平成29年告示)総則編』)に注目し、自分の思考や行動の客観的な把握に資する、ICTを活用した模擬授業実践を紹介します。
2.「話す能力」を自己評価する難しさ
音声言語は、その場で消えてなくなってしまいます。学習者が自分の「話す能力」をなかなか対象化できないのは、この音声言語の特質にも拠ると考えられます。
音声言語のこの欠点を乗り越えるため、従前、評価者は、文字言語(原稿・記憶を頼りにした振り返り)を用いたり、録音音声を用いたりしてきました。文字言語は、確かに吟味・評価に有効です。しかし、〈その時・その場〉の活動そのものを評価しているわけではありません。文字言語のこの欠点は、録音音声を用いることでひとまずは乗り越えられます。しかし、録音の鮮明さの確保等、環境に左右されるという難しさがあります。録音音声は単独スピーチの評価方法としては有効かもしれません。しかし、話し合い活動等を評価する際には別の工夫が必要であるように思われます。
3.音声入力ソフトの活用と共同
ここで紹介するのは、東京学芸大学教職大学院における「音声入力ソフト」を活用した文字起こしと共同的な添削を通して、学習者自身の「話す能力」をメタ認知させる模擬授業実践です。以下は、その概略です。
4.おわりに—学習者のフィードバック
今回は、音声入力ソフトを活用した学習者の振り返り・フィードバックを重視した取り組みを紹介しました。
以下、模擬授業参加者のコメントのいくつかを今後の課題として引用し、本稿を閉じます。