Vol.154「「メタ認知」に関わる力」の育成に資するICTの活用

2022.11

1.はじめに—学習指導要領とメタ認知
 『中学校学習指導要領(平成29年告示)』は、知・徳・体にわたる「生きる力」を生徒に育むため、全ての教科等の目標や内容を三つの柱で整理しています。その柱の一つに「学びに向かう力、人間性等」があります。ここでは「学びに向かう力、人間性等」に含まれる「「メタ認知」に関わる力」(『中学校学習指導要領(平成29年告示)総則編』)に注目し、自分の思考や行動の客観的な把握に資する、ICTを活用した模擬授業実践を紹介します。

2.「話す能力」を自己評価する難しさ
 音声言語は、その場で消えてなくなってしまいます。学習者が自分の「話す能力」をなかなか対象化できないのは、この音声言語の特質にも拠ると考えられます。
 音声言語のこの欠点を乗り越えるため、従前、評価者は、文字言語(原稿・記憶を頼りにした振り返り)を用いたり、録音音声を用いたりしてきました。文字言語は、確かに吟味・評価に有効です。しかし、〈その時・その場〉の活動そのものを評価しているわけではありません。文字言語のこの欠点は、録音音声を用いることでひとまずは乗り越えられます。しかし、録音の鮮明さの確保等、環境に左右されるという難しさがあります。録音音声は単独スピーチの評価方法としては有効かもしれません。しかし、話し合い活動等を評価する際には別の工夫が必要であるように思われます。

3.音声入力ソフトの活用と共同
ここで紹介するのは、東京学芸大学教職大学院における「音声入力ソフト」を活用した文字起こしと共同的な添削を通して、学習者自身の「話す能力」をメタ認知させる模擬授業実践です。以下は、その概略です。

  1. (1)話し合い活動をスマートフォン等に録音する。
  2. (2)音声入力ソフトで文字起こしをする。
  3. (3)ファイルを共有し編集する。誤変換を正し、発言者を書き加える。適宜改行し、句読点を追加する。間投詞(「えー/あー」)を消す等、発言の添削はしない。
  4. (4)文字起こしした文章を、ルーブリックと振り返りシートを用いて自己評価する。

4.おわりに—学習者のフィードバック
 今回は、音声入力ソフトを活用した学習者の振り返り・フィードバックを重視した取り組みを紹介しました。
 以下、模擬授業参加者のコメントのいくつかを今後の課題として引用し、本稿を閉じます。

  1. 音声の文字起こしに関しては、技術的な問題が残る気がします。
  2. 文字起こしでは見とれない非言語コミュニケーションの一面をどう評価するかも考える必要があると思います。
  3. 言葉を文字に起こすことで振り返りがしやすいように感じました。
  4. 本来の話す能力を評価できるきっかけになると感じました。

宮城県仙台二華中学校・高等学校
谷島潤一
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