Vol.206子どもたちが「暗黙のうちに学ぶ」ヒドゥン・カリキュラム

2026.07

 私たちを取り巻く教育現場は、多様化する生徒たちのニーズに応えるため、私たち自身も常に学び、変化していくことが求められています。近年、学校教育において、「カリキュラム・マネジメント」という言葉を耳にすることが増えてきました。カリキュラムと聞いて教育課程をイメージされた方が多いかと思いますが、文部科学省は教育現場にカリキュラム・マネジメントが必要な理由について、次のように述べています。

 教育課程とは、学校教育の目的や目標を達成するために、教育の内容を子供の心身の発達に応じ、授業時数との関連において総合的に組織した学校の教育計画であり、その編成主体は各学校である。各学校には、学習指導要領等を受け止めつつ、子供たちの姿や地域の実情等を踏まえて、各学校が設定する教育目標を実現するために、学習指導要領等に基づきどのような教育課程を編成し、どのようにそれを実施・評価し改善していくのかという「カリキュラム・マネジメント」の確立が求められる。(1)

 ただ、カリキュラム・マネジメントを確立して、毎年それを踏襲しているだけでは、多様化する学校現場の課題に対応できなくなることが予想されます。なぜなら、生徒たちが学校で学ぶのは、「カリキュラム」だけではないからです。
 日ごろの教育活動を振り返ると、現場ではカリキュラムに組み込まれていない指導も多く行われています。たとえば、「整列はまっすぐにする」や「身だしなみを整える」など、教室での振る舞い方、他者との関係構築、そして規範意識などがそれです。こうしたカリキュラムに含まれない指導は「ヒドゥン・カリキュラム(Hidden Curriculum)」と呼ばれ、溝口は「『ヒドゥン・カリキュラム』とは、学校の明示的な教育計画とは別に、子どもたちが暗黙のうちに学習しているルールや価値観、態度などを指します」(2)としています。
 多様化する生徒に対応するには、一人ひとりの教師の力が大きく問われます。自身の指導法に悩む教師も増えるでしょう。そこで私が提案したいのは、学校や学年、または教科単位でヒドゥン・カリキュラムを共有することです。
 「服装についてどう指導すればいいのかわからない」「あの先生は整列を厳しく指導されているから私もやらなければいけないのか」など、悩みの多くは教師一人ひとりの価値観の違いから生まれています。そうした影響を一番に受けるのは子どもです。「あの先生はこう言う」「この先生なら安心」など、先生を裁定するような子どもたちの声は時として、新任の教師を苦しめます。しかし、現場でヒドゥン・カリキュラムを共有することができていれば、一貫性のある指導ができると思うのです。
 私たちの日常の教育活動の中に潜むヒドゥン・カリキュラムに意識を向け、それが生徒と教師にどのような影響を与えているかを考えてみませんか。多様化する学校現場において、ヒドゥン・カリキュラムを意識してカリキュラムを見直すことが、教師の働き方にも生徒の学び方にもいい影響を与えると思います。

武蔵野市立第四中学校 
中野 達矢
【参考文献】
(1)文部科学省(2017)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1364319.htm (2)溝上慎一(2006)カリキュラム概念の整理とカリキュラムを見る視点 ─アクティブ・ラーニングの検討に向けて─
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