みなさんは、「小学校の家庭科で何やった?」と聞かれて、すぐに答えられますか? この質問に答えられるか否かは、小学校を卒業してからの年数が大きく関係してくると思います。
このテーマを高校入学直後の家庭科の授業で取り上げると、とても盛り上がります。その理由として、まず、全員が何かしら体験しているから、ということが挙げられます。また、家庭科の授業自体は全員経験していますが、印象に残っている題材は違うことが多いので、「自分は○○を料理した」「私はミシンで○○を作った」とたくさんの意見が出ます。どのクラスも、入学直後とは思えないほどの盛り上がりをみせます。
私がなぜ初回の授業にこのテーマを取り上げるかというと、もちろん生徒の既習事項をリサーチしたいという思惑もあるのですが、それ以上に、誰もが発言しやすい雰囲気をつくるためです。
生徒が、生涯にわたって学び続ける力、主体的に考える力を育むために、授業に、アクティブラーニングを取り入れることはかかせません。アクティブラーニングの技法には様々なものがありますが、どの技法を用いるにしても、その技法を取り入れたからといって、すべての生徒が主体的に学習に取り組むようになるわけではないことは、みなさんお気づきのことと思います。
そこで大切になるのが、クラスの雰囲気作りです。できるだけ早い段階ですべての生徒に発言の機会を設けることで、発言することへのハードルが低くなり、その後も授業に参加しやすくなるのではないでしょうか。
このような考えの下、初回の授業で私は、前述のテーマで「バズセッション」という討議法を用いて授業を進めます。これはドナルド・フィリップスにより考案された話し合いの手法で、ブレインストーミングの一種です。少人数(フィリップスは6名を推奨)のグループにわかれ、バズ(=buzz)、蜂がブンブンと賑やかに飛び回るように、思ったまま自由に話し合います。その際、他の人の意見を否定してはいけません。その後グループの代表者が発表します。発表者は意見をひとつにまとめる必要はありません。
この方法を用いることで、全員の小学校家庭科の体験が、クラスで共有されます。第2ラウンドとして「中学校の家庭科で何やった?」と投げかけ、中学校家庭科の体験も共有します。(盛り上がると話題は家庭科に留まらず、お互いの小中学校の思い出話に花が咲きます)それらをすべて板書したうえで、それを眺めながら、「これから高校の家庭科では何を学ぶのでしょう?」と問いかけると、自然と、前後左右の級友と相談し始めます。自発的なアクティブラーニングの始まりです。
このように、少人数のグループでディスカッションする「バズセッション」は、生徒の発言をまんべんなく拾うことができます。また、新しいクラスでお互いを知り合うことができるというメリットもあります。ぜひお試しください。