Vol.176「問い」を生かした算数授業

2024.02

 チャイムがなり、始業のあいさつをすませると、先生が黒板に授業のめあてを書き、そのめあてに沿った活動が展開されます。
よく見かける算数の授業光景ですが、みなさんは授業のめあてをどのタイミングで書いていますか?

 わたしは初任の頃、授業を成立させることに精一杯になり、授業の始めにその時間のめあてを書いて授業を行っていました。ある日の5時間目、いつものように、めあてを書き授業を行っていると、「グー」という、男子児童の居眠りの音が聞こえ、その事実に衝撃を受け自分の授業について猛省したことを思い出します。

 子どもが退屈に感じる授業は二度としたくない、子どもが楽しく取り組める算数の授業がしたいという思いで、算数の研究を続けてきました。  冒頭のめあてを書くタイミングに話を戻しますが、わたしは、児童に「問い」が生まれたタイミングで、授業のめあてを書くようにしています。

 「問い」とは、「算数に関わる疑問」のことです。問題を把握した時に、「どの既習事項が使えるかな?」という「問い」をもつことや、問題の答えを予想するときに「わたしの予想はあたっているかな?」という「問い」をもつことで、問題を解決したい意欲が高まります。また、問題を解決した時や活動を振り返っているときに、「このアイデアは、いつでも使えるのかな?」などの発展的な問いが生まれると、「問い」が探求への原動力になります。

図1 問題解決の過程

 先日、男子児童のSさんが「一辺が10cmの正方形の工作用紙から四角を切り取り、ふたのない直方体を組み立てて高さが何cmの時に体積が最大になるか」という問題に挑戦しました。

図2 箱の体積問題

 Sさんは、高さが高くなるほど体積が大きくなるだろうと予想しますが、予想は外れ驚きの表情に。次に、高さが低く、底面積が大きくなれば体積が最大になるだろうと考えますが、またしても予想は外れます。「どうして?」と不思議がっていろいろな高さの体積を調べて最大体積を見つけようとします。結果を発見した時のうれしそうな姿は印象的で、「問い」が学びに大きく影響することを実感しました。

 算数・数学の内容は、関連的且つ系統的という教科の特性があり、「問い」の解決と同時に新たな「問い」が生まれ、深い学びが期待できます

 算数が好きな児童は、「問い」を連続させ、教師も驚くような発見をすることがあります。また、「問い」をもつことで自分にとっての最適な学びが保障され、つまずいている内容について再考することができるので、算数が苦手な児童にとっても「問い」をもつことは重要なことだと考えます。

 私たち大人も同じではないでしょうか。「問い」をもち、必要感を感じて学んでいるときは、時が経つのを忘れて楽しく活動に取り組んでいます。

 問いを生かした授業を行うことで、算数が好きな児童を育てていきませんか。

東京都昭島市立東小学校
柏木光晴
【引用参考文献】
算数授業研究会(1997)「問い方を学ぶことと授業」東洋館出版社P22~24
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