私が子どものころは、遊びというと友達と近くの公園で野球をしたり、学校の裏の川で魚を捕まえたりすることでした。今考えるとその時の学びのスタイルこそが主体的、対話的な深い学びであり、他の人からすると一見遊んでいるように見えていた中で、感じ、考え、学んでいたのだと思います。自然の不思議や面白さ、友達と関わる楽しさ、難しさなどは、学校の勉強だけでなく、「身近な世界」や「もの」、「ひと」と「遊ぶ」という行為を通し、感じ学び、自分をつくっていたのです。
ここ十数年で子どもの周りの環境は大きく変わりました。便利なものが増え、住みやすい社会になったことで、考えること、自分で感じることが経験しにくい社会になってしまいました。だからこそ、思考をアクティブにして「遊ぶように学ぶ」場を、授業の中で用意することが必要なのだと思います。
図画工作(以下、図工)で大切なことは、まずは自分で感じることだと思います。それがその後の活動をアクティブにする原動力になり、材料や場を感じて思ったことや経験したことをきっかけにして、試しながら表していくのだと思うのです。
先日、「土でかく絵」という題材を3年生と行いました。まずは身近にある土を集めてくることから始めます。集めることで自分の身近な社会や環境を感じ取り、その土をみんなで見てみます。そうすると土といっても色や匂い、質感などが違うことに子どもたちは気付いていきます。今回はこの土を使って絵の具をつくることを伝えると、子どもたちはまるで科学者になったように土を混ぜ合わせ、夢中になってボンドやのりの分量を変えたり、違う種類の土を加えたりしてオリジナルの絵の具をつくっていきました。たくさんの絵の具ができましたが、そこには同じ絵の具は一つもありません。だからこそ、子どもたちは多様性に気付くのです。つまり、友達との違いが分かってくることで、自分という存在がはっきりとしていくのです。自分で感じたことから表現を見付けていく中にこそ、喜びがあります。今回は絵をかくことを目標に展開しましたが、この授業での大きな学びは身近な材料を感じ、その材料だけで自分の絵の具をつくったことです。
先生が敷いたレールの上を進んでいく授業ではなく、自分で感じ考え、何度もやり直し試す中で見付けた新たな価値は、子どもたちを一回り大きな自分に成長させていくのだと思います。そんなことができるのが図工教育の魅力なのです。