授業では、指導と評価の一体化が求められています。学習指導要領では、「生きる力」をより具体化し、教育課程全体を通して育成を目指す資質・能力を「何を理解しているか、何ができるか(生きて働く「知識・技能」の習得)」、「理解していること・できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる「指導力・判断力・表現力等」の育成)」、「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養)」の三つの柱に整理するとともに、各教科等の目標や内容についても、この3つの柱に基づいて再整理されました。これによって、各教科でどのような資質・能力の育成を目指すのかが明確化されました。
これにより、教員は「子どもたちにどのような力が身に付いたのか」という学習の成果を的確にとらえること、即ち評価をすることを通して、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善を図ることが期待されています。
つまり評価は、して終わりではなく、よりよい学びのための授業改善に活用してこそその意味をもつと捉えることができます。今回は、自らの授業改善に活用できる児童の自己評価について考えてみます。
私は、児童の自己評価を授業に良く取り入れていました。特に使いやすかったものが「OPPA(One Page Portfolio Assessment)」です。このシートの特徴は、単元の振り返りが1枚のプリントに収まっていることです。初めに単元を貫く本質的な問いに対する答えを書く欄があります。そして毎時間ごとの授業タイトル、現時点での学習問題の答え、学習分析レーダーチャート、振り返りを記入する欄が、単元の時数分用意されています。そして単元の終わりに、本質的な問いに再度回答する欄があります。つまり児童は、以下のような活動を、単元を通して行います。
①単元の初めに本質的な問いの答えを考える。
②毎時間の自らの学びを省察し、蓄積する。レーダーチャートには「納得度」「熱中度」「学習問題解決度」「個人の頑張り」「協働的な頑張り」などの項目を設定し、学びに取り組む姿勢を自己評価します。
③単元の最後に、本質的な問いに対する答えを再び考えることで、自らの変容を自覚する。
この活動の良さとしては、次のようなことがあります。
①については、児童のレディネスを評価することができます。単元を始めるにあたり、どの児童がどの程度の知識をもっているのか、何を教えなくてはいけないかということを明確化できます。
②については、児童の学習の達成度合いと学びに取り組む意欲を見取ることができます。授業者が想定する学びに達しているかは、現時点での学習問題の答えから読み取ることができます。また、レーダーチャートや振り返りからは学びに取り組む意欲や現時点での興味・関心を把握します。
③については、児童が自身の変容を見取ることができます。また、教員は何時間目の授業が児童の最終的な学びに影響を与えたのかを読み取ることができます。
毎時間、児童が自己評価をする機会を設定することで、教師も毎時間授業改善のヒントをもらうことができます。単元開始前に計画していた通りに進行する授業はありません。児童の現状や興味・関心、悩みや苦労に寄り添いながら、いかに単元計画を軌道修正できるかが教員の腕の見せどころです。そのためにも、児童の自己評価を効果的に活用して、よりよい授業を教員と児童とで作り上げていってほしいと願っています。