Vol.103「言葉」から特別支援教育を考える①
考えることが苦手な子どもには「答えを選べる」発問を

 「今日は何を着ていこうかなあ」
 小さな子どもが、自分で今日着る服を「選べる」ようになること。これは、成長の瞬間のひとつです。それまでお母さんがしてくれていたことが、自分でできるようになるのですから。
 とはいえ、最初の頃は、タンスの一番に上に入っていたものを、そのまま引っ張り出すだけかもしれません。これでは自分で選んでいるとはいえません。
 そのうちに「今日は寒いから、厚手の服を着ようかな」とか、「今日は遠足だから、動きやすい服にしよう」とか、状況や予定等を考えて、服を「選べる」ようになります。こうなると、子どもは考えて「選ぶ」行為ができるようになったといえます。
 つまり、「選ぶ」という行為と、「考える」という行為は、大きく関わりがあるのです。「選ぶ」ためには、何かしらの理由があって、その理由に基づいた選択を、行動で表現しているといえます。

 さて、学校の授業において、なかなか考えることが難しい子ども、考えたことを表現することが難しい子どもがいます。教師は、そのような子どもでも「考えやすくなる」授業を考えていかなければなりません。
 もしかしたら、ヒントは「選ぶ」という行為にあるのではないでしょうか。例えば「どちらが?」という「選べる」発問を授業に取り入れたらどうでしょうか。

【教師】「AとB、どちらが〇〇でしょうか?」
【子ども】「ぼくは、Aだと思います」

 これなら、より多くの子どもが、参加することができます。そして、選んだ理由や根拠を、さらに「どうして?」という発問で問うてみたらどうでしょうか?

【教師】「どうして、Aを選んだのですか?」
【子ども】「〇〇だから、Aを選びました。」

 「なんとなくAがいいと思いました」「直感でBだと思いました」では、考えたことにはなりません。ここに、選択した理由を「〇〇だから」と言語化して表現することで、子どもが考えることができたと評価することができるようになります。

 これは、いろいろな教科の授業で応用することができます。国語科の「話す」学習なら、「どちらの本が好きですか?その理由をペアで話しましょう」。

 社会科の地理的な内容の学習なら、「私たちの町は、どちらの生産量が多いでしょう?」。

 考えることが苦手な子どもたちにとっても、とりあえず、どちらかを選べばいいのですから、最初から授業についていけないという状況を回避することができます。最初から「考えなさい」という高い山を設定するのではなく、「どちら?」という低いハードルを設定することが、考えることが苦手な子どもへの支援ともなります。

東京学芸大学教職大学院
准教授 増田謙太郎
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