Vol.100学級担任としてのカウンセリングマインド

2020.03

 学校現場は、不登校やいじめへの対応、特別な支援を要する児童生徒への支援など、様々な課題に追われています。一方的な指示や助言では解決が難しいケースが多く、対応次第では、先生の意図に反して子どもや保護者との溝を深めてしまうこともあるでしょう。そのため、カウンセリングの基本姿勢がより一層求められるのではないかと思います。
 しかし、専門的な訓練や知識が必要であるカウンセリングを、担任業務と並行して行うことは難しく、学校現場も混乱してしまうでしょう。あくまで、カウンセリングの基本姿勢としての“カウンセリングマインド”が、指導や支援の中で生かすことができれば良いのではないかと思います。

 “カウンセリングマインド”はどのような心構えをもつことなのでしょう。「話を聞く」「共感する」などでしょうか。言葉にするのは簡単ですが、先入観や自身の経験に左右されずに相手の話を聞き、気持ちを理解していくことは、非常に難しいことなのです。
 学級担任は、教え、指導し、評価する立場にあるため、に話を聞き、気持ちをという立場に切り替えることは、人一倍エネルギーが必要なことでしょう。
 たとえば、不登校の子どもと話す機会があり、「勉強が追いつかなくなるよね」「イヤなことは誰にでもあるよ」「大人になったらもっと大変になるのだから」と、一見正しいことを伝えても手応えがないのは想像できると思います。口数が少ない子の場合、先生が良かれと思って教えることにエネルギーを注いでしまうと、子どもが“聞き役”となって不満や疲れを溜めてしまうことは珍しくありません。
 保護者対応においても、わが子の不適応状態や発達課題を受け入れることは容易なことではありません。保護者の迷いや願いを汲みながら話し合ってほしいと思います。「マニュアルが服を着て会っているのではない」と言う人もいるように、一方的な助言や表面的な同調だけでは、生きたやりとりが感じられません。溝が深まるときは、たいていそういった関係性が感じられないときなのです。

 子どもは、自分に大人を求めています。関心がなければ傾聴も共感も起きにくいものです。対応に苦心している子どもを思い浮かべたとき、その子と好きなものや、エネルギーを注いでいることを話し合ったことはありましたか。
 そのようにして向き合ってくれる大人のことを子どもは信頼し、話すようになり、成長へのエネルギーを溜めていくのではないでしょうか。

東京都公立学校スクールカウンセラー
臨床心理士・公認心理師 瀬戸口優子
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