Vol.148既存の教科の枠にとらわれない夢中になる数理的な思考力教材

 2018年のPISA調査において日本の数理的リテラシーの学力低下が指摘されました。そこで、PISA調査で好成績を収めるフィンランドの算数や数学の教材がどのようなものかを調べてみました。調べたなかで特に興味を引いた教材は計算問題のなかに図形の要素を組み合わせたものです。フィンランドの教材には別単元を組み合わせる合理性と子どもが楽しいと感じるゲーム性が盛り込まれているものが多くありました。
 私は日本の算数や数学が受験を背景に暗記型中心となっている傾向に疑問を感じていました。そのため、日本国内における数理的な楽しさを引き出す教材や授業実践にどのようなものがあるかに興味を持ちました。多くの特徴的な実践のなかで、今回は栄光学園の井本陽久氏が開催する「いもいも」と呼ばれる学習教室で扱う教材を紹介します。
 一つ目はカプラという道具を使ったグループ型学習ゲームです。ゲーム内容はカプラを用いた複雑な作品を再現するというシンプルなものです。各グループ一人ずつ順番に別室にある作品を覚えて、グループで協力しながら試行錯誤を繰り返して完成させていきます。
 二つ目はボンガードパズルです。これはロシアのコンピュータサイエンス学者ミハイル・モイセーヴィッチ・ボンガード博士が1967年に考案したパズルです。このパズルは二つにグループ分けされた模様から分類されるルールを推測するものです。
 三つ目はシンクシンクという教育アプリです。「ひとふででんきゅう」、「あなうめパズル」、「つなげレール」などの様々なゲームで空間認識や論理思考などの考えるための土台となる思考センスを育むアプリです。
 これら三つの教材はどれも数理的思考を絶妙に刺激するものばかりです。共通するのは子どもたちがまず楽しいと思えるものであるということです。だからこそ、自然と意欲が引き出され、思考力が身についていきます。意欲や思考力が伸びることで、その後の知識習得をともなう学びが、何倍も有意義なものになっていくと考えられます。しかしながら、日本の受験システムにはこのような実践ばかりでは対応しきれないのも事実です。どうしても暗記型学習は避けては通れません。以上のことから暗記によって得る知識や機械的な計算能力、そして数理的思考の絶妙なバランスが取れた教材を作り上げることが求められます。このような理想的な教材は算数・数学嫌いの子どもの手助けになり、今後の日本の数理的リテラシーの学力向上につながるのではないでしょうか。

静岡県立静岡高等学校
市川昌平
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