子どもたちが、よりよく生きるためには、世の中のことを理解したり、身近な生活の中で疑問に思ったことを確かめたり、願う世の中になるように社会に参画していく力を身につけることが重要です。そして、社会科とは本来、暗記ではなく、そうした力を養うための教科なのです。
では、どのようにすれば、子どもたちが、そうした力を身につけていくのでしょうか。
その方法の一つは、子どもたちが単元や学期、あるいは1年を通して考え続ける「問い」や「テーマ」をもつことです。
例えば、6先生の社会科では歴史的な内容を扱いますが、ただ出来事を覚えていくだけでは、社会科は暗記である、ということを実感させて終わってしまいます。そこに、「法や決まり」というテーマを導入したらどうなるでしょうか。「法や決まり」には、①その時代に大切なことや合意したこと、②それを行うとコミュニティが崩れる可能性があること、③多くの人が揉める利害、④政治をおこなう人の考え方、などがあらわれています。つまり、法律から社会の様子が考えられていたり、逆に社会の様子から法律を予想したりすることができるのです。
例えば、縄文時代のイラストから当時の人々の生活を読み取る授業で、「当時はどのような法や決まりがあったのか」と問いかけます。
すると、それまでは「土器作りをしている人がいる」「ウサギを獲って村に帰ってきている」といった事実を羅列していた子どもたちが、「何を大切にしていたのか」という価値について考え始めます。そして、一緒に狩猟をするための協力が大切だったと考える子どもは、「狩りではリーダーの言うことを聞く」という決まり、土器によって煮炊きができることの偉大さに気づいた子どもは、「土器作りの技術を持った人は、命の危険がある狩りには行かなくてもいい」という決まり、というように、読み取った事実をつなぎ合わせて「当時の人々が大切にしていた考え方」について、その子なりの思考判断を表現する場に授業がなります。こうした社会事象を解釈する力が、これからの社会では必要なのです。
また、そうした価値判断の結果をクラスで聞き合うことは、自分の判断とは違う仲間の良さを知ることであり、ともに学ぶたのしさを知ることにもつながっていくのです。