Vol.123心理師からのアドバイス2①
思春期のトラブルについて
~なぜ子どもは抱え込むのか~

2021.3

○ひっそり悩む子どもたち
 思春期の心は「本当の自分は何だろう」と、大人(親)と異なる自分の価値観を作り始めます。この“自分作り”の過程で、「甘えと反抗」と言われるように大人との距離感が不安定になり、悩みを一人で抱え込むことも少なくありません。中高生を対象にした複数の調査では、およそ10人に1人が「わざと自分の体を刃物で傷つけたことがある」と答えています。大人が気づいているより多くの子どもが、ひっそりと悩んでいる姿が窺えます。

○大人をよく観察している子どもたち
 子どもは大人に迷惑をかけたくないと思っています。そこに自分で解決したい気持ちも重なり、ますます悩みを言い出せません。相談室で子どもと会っていると、子どもが大人の様子を普段からよく観察していることが分かります。「大事な話があるならちゃんと聞くよ」と大人は思っています。しかし、いつも忙しそうな大人の様子を見ると、「こんな話をしたら困らせるだろうな」「大人は動揺して大ごとになるだろうな」と、子どもは話すのを躊躇うようになります。

○自分を傷つける子どもたち
 思春期は心身の成長に伴い、心の問題も本格的になります。中学校・高校の相談室では、リストカットなど自傷の話をよく聞くことがあります。ショッキングな出来事ほど、行為そのものに目を留めてしまいますが、なぜ子ども達は自分を傷つけてしまうのでしょうか。
 自傷の心理は複雑ですが、そうしてまでも「死にたいほどつらい気持ち」を何とか鎮めたい、自分から切り離したいという思いがあります。心理学では、つらい気持ちは『“話す”ことで“離す”ことができる』と言われることがあります。しかし、自分を傷つける子ども達は、人に話せずに自分で何とかするしかなかったとも言えます(「孤独な対処法」と呼ばれることも)。
 自傷行為によって一時的に気分が切り替わっても、再び自分を責めるようになります。やはり信頼できる人と気持ちを共有できることが回復につながっていきます。

○関心を持ち続ける大人たち
 10代のSNS疲れやトラブルが後を絶ちません。すぐに“ブロック”できる(される)現代の子ども達は、お互いに気を遣い合う一方で、じっくり向き合って支え合うことが難しくなっています。関わるきっかけ作りが苦手な子も少なくありません。そんな子ども達にとって、人と出会い、関わり合う場としての学校はより一層重要になるはずです。「校則を見て顔色を見ない」と厳しい言葉を聞いたことがありますが、まずは大人が子どもに関心(つながり)を持ち続けてほしいと思います。そしてそれは、大人も一人で抱えずに、協力できる仲間とのつながりがあってこそできるものです。

東京都公立学校スクールカウンセラー
臨床心理士・公認心理師 瀬戸口優子
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