今回は、私が国語の学習でいつも大切にしている活動のひとつである「ノート学習」について紹介します。授業における一般的なノートの使い方というと、教師の書いた板書を写す活動や、自分の意見や考えをまとめる活動が思い浮かぶかもしれません。しかし、教師の指示に従って書かされる操り学習では、学習者の意欲や、思考力・判断力・表現力は高まりません。そこで、私はノートを思考のためのツールとして、学習者自らが積極的に駆使する学習を行っています。この「ノート学習」では、単なる「内容知」の整理だけでなく、思考を働かせる、すなわち、情報を取り出し、解釈し、判断する行為の中で、ノートが学習者の「方法知」となることを重視しています。つまり、教師が学習内容を知識として教授するのではなく、学習者自身がノートというツールを活用しながら思考を展開していくこと、それが思考力・判断力の基礎となり、ノートというフィールドに記されることによって表現力を高めることにつながるのです。
では、実際にノート学習をどのように進めていくか、簡単に説明します。ノート学習はその年度の始め、すなわち国語の授業開きでいつも行うようにしています。そして、教科書教材の1番最初に出てくる文学的文章を提示して、「色々な読み取りの方法を使って、自分だけのノートを創ろう」と子どもたちに投げかけます。その際は、あらかじめノート作りの例を示してみせます(資料1)。
資料1 教師によるノート作りの例
子どもたちはその例を参考にしたり、例にはない方法で自分なりに工夫したりしながら、ノート学習に取り組んでいきます。ここで大切なことは、どんなノートでも積極的に褒めることです。どんなに見栄えが悪くても、その子なりの読み、すなわち思考がノートに表現されていることに価値があります。そして、年度を通じて様々な単元にノート学習を組み込んでいくことで、少しずつノートの質が上がっていきます。
以下に、子どもたちのノートをいくつか紹介します。
資料2 5年生の文学的文章 新見南吉『あめ玉』(光村図書)でのノート
資料3 6年生の文学的文章 宮沢賢治『やまなし』(光村図書)でのノート
【参考文献】
・井上陽童「学びの過程を重視して、自立した学習者を育てる—新たな学力と評価をつなぐ国語単元学習の可能性」日本国語教育学会編(2016)『月刊国語教育研究12月号』pp.13-14
東京都立川市立新生小学校主任教諭
井上陽童
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