大学3年生の教育実習は楽しかったのですが、実習で生徒に好かれたい想いが強い自分に気づいてしまいました。「今の自分の器では生徒に迎合してしまい、導くことはできない。」と怖くなり、教師になることを止めました。そこから約10年間の会社員生活から、東日本大震災をきっかけに教育に関わりたいという想いが沸いてきて、教育系NPOに転職をし、教育の面白さを再認識しました。「もっと子どもたちの日常に関わりたい」と考え、教師になることを決めました。教師になると周囲に伝えると「教師は今、大変でしょ。大丈夫?」と心配をされました。教師になってからも「中学校の先生なんて大変だね。」と言われることが多いです。その時には「確かに大変な面もありますが、私にとっては今までで一番面白くて心が喜ぶ仕事です。自分が生きている心地がします。」と答えています。
教師の仕事は、自分がした仕事の結果がダイレクトに返ってきます。こちらがいい働きかけができると、子どもたちからは何倍にもなっていい反応が返ってきます。反対にこちらの働きかけが間違っていると、反発や何も響かない形として返ってきます。こんなにわかりやすく、自身の仕事を常に振り返りながら試行錯誤ができる。成長し続けていることを実感できる仕事です。生徒たちと心が通い合った時の温かさ。想像を軽く超えて来る生徒たちの成長。忖度なしで心をぶつけにいける。仕事を通して心が揺さぶられる感覚は会社員時代にはありませんでした。
そして、教師という仕事はとてもクリエイティブな仕事だと思っています。教育を通して色々な仕掛けを作っていくことができます。私が教師として一番大切にしていることは「子どもたちが生まれ育った環境に左右されることなく、自分の力で人生を切り拓いていく力を育てること」です。人生にはいろいろな選択肢や生き方があることを伝えていきたいと考えています。そして、自分で考え、自分の言葉で発信できる力を育てたいと考えています。そのために、生徒たちにとって様々な人生の先輩たちを巻き込んで授業を行ってきました。私の力だけでは、見せられない世界を、外とつながることで見せることができる。いくらでも見せる世界を広げることができる。人生のどこかのタイミングで思い出してくれることを願い、あとは子どもたちに任せる。想像するだけでワクワクしませんか。
大変なことはもちろんあります。会社員時代と比べても仕事の量は多いです。それでも、私は教師という仕事を通して「生きている心地がする」のです。教師としての「生き方」ではなく、教師として「生かされている」と思っています。