現在の私―防災教育活動に至る道のり
近年、自然災害は予測が難しく、甚大な被害が各地で発生しています。私たち「防災教育ラボ」は、自治体や学校、公園、公民館などと協働し、子どもたちが楽しみながら学べる体験型の防災教育活動を行っています。子どもの気づきが家庭へ、地域へと広がり、防災意識が育つことを目指しています。メンバーは約15名。学生、教員、企業人、高齢者など多様な背景を持つ人々が集まり、それぞれの経験を持ち寄って活動を支えています。私自身が、なぜこの道に辿りついたのか ― その原点を探すため、これまでの自身の教育実践を振り返りました。
私は、公立高校の英語教員として定年まで勤めた中で、「異文化理解」を担当したことが転機となり、大学院での学びを決心しました。異なる文化や価値観に触れることで、人は互いを尊重し合い、支え合うという可能性に、心が動いたのです。折しもコロナ禍、ちょうど熊本県が豪雨災害に見舞われた時。「命を守る教育こそ最も大事」との思いを強めて研究を進めました。ゼミの教授の後押しもあり「だれひとり取り残さない防災」を目指す「防災教育ラボ」を立ち上げ、今の活動に繋がっています。現在は、同大学の非常勤講師として『生涯学習とキャリア形成』の授業を担当し、私自身も学びを続けています。

「異文化理解」の授業で見た生徒の変容
外国語を学ぶことは、言葉を通して、異なる文化や価値観に触れることでもあります。「異文化理解」の授業では、外国にルーツを持つ方々の困りごとを理解し、改善策を考え、実際に関係機関と協働しながら検証しました。生徒たちは、市役所や病院、学校などを訪れ、現場の声を傾聴しながら学びを深め、課題に向き合う達成感を得て、将来への目標を明確にさせていきました。その頼もしさに、私は心を動かされました。
交換留学でも、生徒の変容を何度も目の当たりにしました。英語圏だけでなく、中国内モンゴル自治区、マレーシア、ドイツなど多様な地域での交流を経験し、価値観の違いによる戸惑いや言語の壁、宗教観の差異など、様々な困難を体験し帰国した生徒は驚くほど成長します。出発時はどこか頼りなげな表情が、帰国時には凛とした姿になっていて、若さが持つ力強さを感じられました。
生徒を変えた部活動での体験
インターアクト部の顧問をしている時、地域のロータリークラブの支援を受け、国際ロータリーの留学生を迎える歓迎会で生徒がホスト役を務めたことがあります。不登校経験のある生徒や、人前に立つことが苦手な生徒もいましたが、周囲の温かい励ましを得、数百人の前で話し、踊り、歌う体験は、見違えるほど生徒を大きく成長させました。
卒業式の日、ある男子生徒が手渡してくれた手紙に、こんな言葉が綴られていました。「中学時代の僕は、放課後の教室でひとり教科書を見ていた。でも国際大会を経験した今は違う。誰でも変われる。そのことを多くの高校生に知ってほしい。」彼の目の輝きと力強い言葉は、今も心の奥に深く残っています。体験こそが人を変えると確信した出来事でした。
異質なもの同士の協働が社会を変えるー大学院での学び
大学院では、市民が主体となり行政と協働して町づくりを進める様子や、子ども食堂・学習支援を行うボランティア活動などを体験する幸運を得ました。行政、学校、PTA、企業、NPO、市民グループなどが同じ目的のもと、それぞれの強みを生かして協働する力は、どれほど大きな可能性を持つものか実感しました。私の現在の防災教育活動の大切な手本となっています。異質なもの同士の協働が社会の変革をももたらす可能性を秘めているのです。
これからの私
防災活動は、人間の固定観念を超えた自然の力と向き合う営みです。その意味で「異文化理解」と根っこは同じだと感じています。自分と異なるものに心を開き、違いを受け止め、新たな価値観を重ね合わせることで、突破口が生まれるのではないでしょうか。
これまで私を支えてくださった方々への感謝を胸に、これからも「異質なもの」を大切にしながら「協働」を重ね、共に「なるほど」「なっとく」と感じ合える仲間の輪を広げていくことを、人生の目標として歩んでいきたいと思います。