みなさんは肢体不自由特別支援学級と聞いてどんな様子を思い浮かべるでしょうか?車いすを使用している子、ウォーカーを使用している子など、移動することに困難さを抱えている子ども達が通っている学級を想像されるのではないでしょうか。ここではあまり知られていない(?)肢体不自由特別支援学級の様子をお伝えしたいと思います。
私が所属している世田谷区立松沢小学校の肢体不自由特別支援学級では現在1年生から6年生まで合わせて21名の児童が在籍しています。東京都の肢体不自由特別支援学級の中では一番人数が多い学級です。学年ごとに学習していますし、交流及び共同学習を行っている児童もいるので、21人全員で学習することはあまりありませんが、休み時間や特別活動の時間などは学年を超えた関わりがあります。この学年を超えた関わりを通して、日常生活の中で学び合うことができるのは人数の多い特別支援学級のよさであると感じます。
さて先ほども書きました通り、肢体不自由児というと移動することに困難さがある子供たちと思い浮かべるかもしれませんが、そのような子供たちばかりではありません。個々の実態は様々です。「身体に力を入れにくい」「姿勢が安定しない」「疲れやすい」「片麻痺がある」等、児童一人一人の困り感は異なり、教員はそれぞれの実態に応じて教具を準備したり、学習方法を工夫したりしながら授業を行っています。例えば、筆圧が弱い場合には、芯が柔らかく濃い黒がでる6Bの鉛筆を使用したり、ペンを使用したりします。このごろはタブレット端末に指で書くこともあります。姿勢保持が難しい場合には教科書が見やすいように斜面台を使用したり、座位保持椅子を使用したりします。学び方もそれぞれ違います。漢字を覚えるために、たくさん書いて覚える子もいれば、大きく漢字を書いたカードを用いて覚える子もいます。学んでいる内容は基本的には通常学級と同じですが、学び方や使う道具が個々の実態によって異なります。児童にとって学びやすい方法で学んでいるのです。
また時間割の中に「自立活動」という時間があります。自立活動6区分の中の「身体の動き」を中心に行っています。ストレッチをしたり、歩く練習をしたり、身体を動かすだけでなく身体の力を抜いてリラックスする方法を学んだりもします。このような「身体の勉強」は肢体不自由児にとってとても大切なことです。「身体の勉強」をすることによって、自分の身体の状態に気が付いたり、身体の使い方がうまくなったりします。さらに身体の状態がよくなると学習にも効果が表れます。
このように多様な実態に合わせた多様な学び方をしている子供たち、そして身体の勉強をしている子供たちが通う学級、それが肢体不自由特別支援学級です。子供たち一人一人にとっての「Well-being」を目指して、肢体不自由特別支援学級は進化し続けています。