私が養護教諭になったのは、中学時代に出会った恩師の影響を受け、家庭科の教員免許を取得したことがきっかけでした。家庭科の教職課程において、「衣・食・住・保育・健康」を中心に家庭科教員としての学びを深めるうちに、「人間の心と体、健康とは何か」を専門的に学びたいと考えるようになりました。そして、子供たちの心や体の健康をサポートができる養護教諭になりたいと思うようになりました。
家庭科の教職課程修了後、養護教諭養成課程のある大学の3年次に編入しました。基礎医学をベースとして保健学、心の問題解決支援を学ぶ精神保健領域や健康の維持、増進支援スキルを磨く健康教育領域について仲間と夜遅くまで勉強をしていたことを覚えています。授業を受けながら就職活動、教育実習と忙しい日々を送っていたことを思い出します。
多くの仲間は卒業後すぐに教員を目指す中、私は教員としてすぐに働くのではなく、一般企業に就職することを希望しました。なぜなら、様々な分野で学んできた人たちと仕事をすることで、自分の視野を広げ、多面的・多角的に物事を見られるようになりたいと感じたからです。就職氷河期であったため、多くの企業は新卒採用をせず、厳しい就職活動でしたが、幸いにも学びを生かせる大手食品メーカーの惣菜事業部門で内定をいただきました。
入社後3年間、デパートや大型スーパーの食品担当バイヤーが取引相手となり、お客様の「元気のもと」となるお惣菜の開発や商品の提供をし、食を通して豊かな社会づくりに貢献してきました。コミュニケーションを大切にし、お客様のニーズに合わせた商品開発ができることの楽しさ、やりがいを感じると同時に売り上げや、利益達成をすることの難しさも学ぶことができました。そして「いつか養護教諭になりたい」という夢を叶えるために転職をしました。
養護教諭になり、一般企業での経験を生かして、子供たちの心と体の健康、生涯の健康基盤の育成をサポートすることで、子供たちの成長が見えることにやりがいを感じています。最近では、進路相談を受ける機会も増え、「親に進路の話をするとケンカになるから先生に聞いてほしい」と保健室に来室する生徒も増えています。親に言えないことを何でも話してくれる信頼関係が生徒と構築できているんだなと嬉しく感じます。そして、「保健室に来てよかった」と笑顔で帰っていく生徒の姿を見ると、幸せな気持ちになります。
一見遠回りをして養護教諭になりましたが、最終的には私が理想とする養護教諭の姿はこれだったと思います。
今後も学校運営や生徒理解にも積極的に関わりながら保護者、教職員、地域の方々からも頼りにされる養護教諭でありたいです。
新宿区立新宿西戸山中学校
養護教諭 野坂洋子
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