特別支援学級とは、特別な支援を必要とする児童・生徒に対し、障害による学習上又は生活上の困難を克服する教育を行うことを目的に設置された学級です。本稿では、中学校に設置されている知的障害特別支援学級の教育についてご紹介します。
(1)特別の教育課程
特別支援学級では、通常の学級と同様に各教科や道徳、特別活動、総合的な学習の時間を行っていますが、その他に「自立活動」や「各教科等を合わせた指導」を取り入れることができます。教科別の指導目標・指導内容は、生徒一人一人の実態に応じて、下学年や知的障害特別支援学校の指導内容を選択することができます。
★自立活動とは
障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識、技能、態度などを授けることを目的とする特別の指導領域です。
例えば、不安や緊張が強く集団参加に困難が見られるAくんの場合は、教室を飛び出して活動を回避するなどの行動を改善するために、混乱した時の状況や気持ちを言語化して教師に伝える学習や感情を調整する学習をするなど、生徒の特性を踏まえて指導内容を選択して指導を行います。(特別支援学校学習指導要領自立活動編6区分27項目を参照)
★各教科等を合わせた指導とは
知的障害の特性に合わせた指導形態の一つです。学校での生活を基盤として、学習や生活の流れに即して学んでいくことが効果的であることから、「日常生活の指導」「生活単元学習」「作業学習」があります。
例えば、作業学習「箸置きの製作」では
1 牛乳パックと和紙で箸置きを製作する
2 バザーの案内状を書く
3 バザーで販売し、利益を計算する
という作業活動を通して、以下の各教科の指導内容を実際的に学んでいきます。
・職業(働くために必要な意欲・態度など)
・数学(計数、計測、お金の計算など)
・国語(聞く話す、敬語、手紙の書き方など)
(2)学習形態
特別支援学級は、異学年の生徒で構成されている学級です。教科や学習内容によって、学習形態を全員一斉、学年別、学習到達別、グループ別(異学年・障害種別)、個別など、柔軟に変えることにより、集団で学ぶよさを大切にしながら、個に応じた指導を実現しています。異学年集団で学ぶ利点は、年齢や実態に差がある生徒同士で、互いに学び合い、助け合いができることです。全員が下級生・中間生・上級生の立場を経験するため、互いに優劣を付けることなく、多様性を認める心や社会性が育まれます。
特別支援学級の教師には、学級生徒の実態に応じた特別の教育課程を編成することや多様な生徒を同時に指導する力が求められています。