現代の教育の目的は、創造性のある人間を育てることです。人の創造性の芽を摘むようなことをしてはいけません。新しいコトやモノを作り出すためにも、課題解決にも、そして日常生活を喜ばしいものにするためにも、人は自ら創造的なアイデア、行動、概念、言葉を活用して工夫を重ねます。未来を自ら創造できる人を育てるという、次期学習指導要領の目指すところは、大いに賛同できます。
産業分野で求められているのは、イノベーションする力、シンセティックな力です。超高齢・長寿社会、低成長社会への移行とともに、生活の価値創造における変革が必然的に求められます。我々はAIやVRをツールもしくはパートナーにして、学び方や生き方を転換していくことになるでしょう。
初中等教科教育においては、教師には領域的専門性が求められています。特に、各学問領域の対象、見方・考え方と探究法とを習得することで、子どもは考えたり行動したりする上で強力なツールを得ます。子どもは各領域の問題解決を体験して学びます。教育者はその学びを見定めます。このとき教育者は、分野領域における見方・考え方と探究法とを自覚的に教育に用いるべきでしょう。
AIをはじめ、人工物は主として演繹的論理及び確率概念で構築されています。これに対して、人間が現実の未知を切り拓くためには,インスピレーションや仮説推論を必要とします.これらは厳密な論理をどのようにつなぎ合わせても出てこない、人間が現実に対して行う拡張的な推論です。C. S. パースは、こうした拡張的推論を自己改善的に行うということを人間の特性と考えたようです。
人間には機械的な確かさも必要です。人の心は確かなものを必要とし、時にそれに縋(すが)ります。領域的専門性は基準となる価値概念を与えます。その上に立ちながらも、教育者自身がその個性や資質を生かして、仮説推論し、自由な価値創造に向かうことが大切ではないでしょうか。