教職の醍醐味は「学び」にあります。教職を志した理由を教師に尋ねれば、「その教科が好きだから」と回答する人は多いでしょう。好きなことを好きなだけ学び、それを職務に活用できる仕事が教職です。社会科を担当する私も、旅行に行けばつい教材を探してしまったり、どうやって教材にするかを考えてしまったりしています。学びと仕事が連続しているのです。
そんな自分自身の教員生活を振り返り、学び続ける教師として大切にしてきた2つの言葉を紹介します。
1 「運・縁・タイミング」
これは、ある校長先生からいただいた言葉です。
教職に就いてから現在に至るまで、中学校の学級担任として生徒と関わってきました。同じクラスは一つとしてありませんでした。同じメンバー全員が集まることも二度とないでしょう。毎年奇跡的な出会いを果たしていたのだと思うと、一人ひとりの生徒の成長に携わることができたかけがえのない日々を、本当に幸せだと感じます。
苦楽を共にしてきた同僚の先生方ともそうです。一期一会。個性的な先生方と、それぞれの強みを生かしながら互いに補い合い、チームとして最善を尽くし、生徒のより良い成長のために様々なことに取り組んできました。
2 「難しいけど、楽しい」
この言葉は、授業後に生徒から言われた私の授業への「講評」です。
中学生は正直です。こちらの準備が足りない時、授業が楽しくない時、授業の内容を理解できない時などは、正直にその思いをぶつけてきます。言葉で言われることもありましたが、それ以上に表情や態度に如実に表れます。だからこそ日々研鑽を積み、少しでも楽しい授業、分かりやすい授業、社会的事象に対する興味・関心・意欲が高まる授業を実践していく必要があります。生徒の表情を思い浮かべながら、どのような授業をすれば良いか、試行錯誤を繰り返してきました。
社会科は暗記科目として敬遠されがちですが、私は、生徒が考えたくなる授業を実践することにこだわってきました。社会的事象は、立場によって見え方や考え方が変わり、別の角度から眺めると違った姿が浮かび上がってきます。効率や公正のように両立が難しい概念を「レンズ」にして、考える教材を用いることもあります。
このような実践を繰り返すと、生徒は「正解」が一つでないことに気付くようになります。安易な解決策に飛びつかなくなります。世の中の言説に批判的な眼差しを向けるようになります。そのためのトレーニングとして、社会科が果たす役割は大きいと考えます。冒頭の「難しいけど、楽しい」という言葉は最上の「講評」で、「講評」してくれた生徒は、このようなトレーニングを楽しんでくれたのでしょう。
教師の学びには様々な機会があり、私も先輩の先生方の実践、各学校などで開催される研究発表会、文献などから多くを学び、志を同じくする先生方と一緒に授業研究を続け、授業力を高めてきました。幸運にも、これらの活動で得た知見を若手の教師に伝える立場になったこともあります。
若手教師への指導は、私の教職生活の転機となりました。縁があって引き受けた指導的役割でしたが、学ぶことが非常に多くあり、自分の授業を振り返るきっかけにもなりました。若手の先生方の授業力が高まることで、生徒の学びも豊かになります。教師を育てることは、生徒を育てるという営みの重要性や面白さに気付くことでもありました。
そして現在は、これまた縁があって教職大学院で学ぶ機会を得ました。自分の実践を見つめ直し、振り返り、実践を理論の面から捉え直しています。そこで出会えた教授の先生方、同じ志をもつ仲間たちとさらに学びを深めています。ここでの学びを児童生徒に還元すべく、これからも精進していく次第です。