音楽科の活動の1つである「音楽づくり・創作」は、近年様々な研究・実践が進められています。今回は、長年音楽教育における創造性をテーマに研究をしている「新しい音楽教育を考える会」と、その会が主催する音楽づくりワークショップについて紹介したいと思います。
「新しい音楽教育を考える会」は、1991年、創造的音楽学習の提唱者の1人であるジョン・ペインター(元ヨーク大学教授)が東京現代音楽祭(日本現代音楽協会主催)のために来日したことがきっかけで発足しました。音楽づくりワークショップの他に、様々な音楽家による講演会や、音楽教育に関する国際ジャーナルの発行などを行なっています(詳細は下記URLへ)。会員制ではないので、誰でも興味のあるワークショップ、講演会などに参加することができます。
音楽づくりワークショップは毎年8月に2日間開催されています。「新しい音楽教育を考える会」の代表である坪能由紀子氏(開智国際大学教授)のもとに、小・中・高校・大学の教員、演奏家、作曲家等の方々が全国から集まっています。私が初めて参加したのは、大学院修士課程在学中の2015年でした。当時このようなワークショップに参加したことがなかったのでとても緊張していましたが、同年代の大学院生によるワークショップや、現代音楽家、音楽教育学者による講演がとても刺激的で、その後毎年参加しています。
最近の音楽づくりワークショップは、2018、2019年と2年連続でTASモデルによる実践を取り上げています。TASモデルとは、教師(T : Teacher)が主体となり、音楽教育学者・音楽研究者・作曲家など(A : Adviser)が教育学的・音楽的なアドバイスを行い、演奏家(S : Supporter)たちが自らの音でサポートするという3者の役割を明確化したものです。学校で音楽家の演奏を聴くという活動は今までにもありましたが、このTASモデルでは教師が主体となるため、子どもたちの状況・特性を1番良く知っている教師が、授業の内容に則して実践することにより、子どもの創造性を引き出しながら豊かな音楽実践をすることができます。具体的には、ジャズミュージシャンの伴奏でブルースの音楽をつくる活動や、箏曲家の弾き方を手本に箏で音楽をつくる活動などがあり、実際に全国の学校で実践されています。
音楽づくりワークショップでは、学校現場に即した研究・実践の成果を紹介しています。