「理科専科をお願いできますか?」。卒業式の日に、校長先生からかかってきた電話の言葉でした。大学4年生の秋頃に学生ボランティアをしていた小学校での、産休代替のお話。「はい!がんばります!」とすぐに返事はしたものの、大学では体育を専門に勉強してきたこともあり、日に日に不安が増していったのをよく覚えています。
着任してすぐ職員室で何をしたらよいか分からず、質問をしようにも忙しそうな担任の先生方にはなかなか声をかけることができず、年の近い先輩に「どうしたらいいですか?」と質問をしていました。もちろん、子どもたちともどのように接したらよいか分からず、授業が「つまらない」と思われないように、必死に授業とは関係のない話をよくしていた気がします。
少しずつ仕事にも慣れ、自分が子どもたちのためにできることが何かについて考えたときに、まず思い浮かんだのは、ノートにコメントを入れることでした。おもしろい授業はできなくても、これならできると思い、自分の担当していた5・6年生8クラス、一人一人に週1回はコメントを入れるようにしました。すると、子どもたちが授業でよく発言をするようになったり、休み時間に子どもたちから私に声をかけてくれたりと、授業の取り組み方や私との関わり方が少しずつよい方向に変わっていきました。また、できるだけPTAや地域の行事に参加をしたり、放課後、子どもたちと一緒に遊んだりしたことで、自然と打ち解けていくことができました。そんな子どもたちの様子について先輩の教員と話をしていると、自然と指導法や授業マネジメント、校務についても話ができるようになり、今でも財産になっている話をたくさんいただくことができました。
教員採用試験の勉強は、自分自身が後回しにしてしまっていましたが、いろいろな先生方が試験のことを心配してくださったり、「私が論文みてあげる」とベテランの先生に声をかけていただいたりしたことで、仕事の合間を縫って集中して勉強することができました。
東京都の正規教員として4年目を迎えた今ですが、産休代替として過ごした1年間がなかったらと思うと少し不安になります。それぐらい今の私にとって、教師の土台となる部分を、子どもたちからも先生方からも教えていただいた1年間でした。