もう一度学生に
自己啓発等休業制度を利用し、52歳で教職大学院に入学、修了時は54歳になります。30代から40代前半が多い現職院生の中で、無謀なチャレンジともいえるでしょう。それでも「もう一度学びたい」という20年来の意志は消えず、子育てが落ち着いたタイミングで実現させることができました。教員としての残り時間がどうであろうと、教壇に立つ以上、生徒にとっては同じだという思いもありました。
30年ぶりに学生となり、かつてダメ学生だった自分が嘘のように貪欲に学びました。若い時と違い、学びの価値がわかっているからこそといえます。最新の教育論ばかりではなく、これまでの教育も踏まえて、これからどのように教育が行われていくのがよいのか。教職大学院は、知識とスキルを身につけ、研究的実践者としての視座を獲得できるよう、体験的な学びが組まれています。それらが、教育現場にとってどういう意味をもつのか、常に、これまでの、そして今後の実践と結び付けて考えました。
理論と実践の往還
「現職の先生方は経験で物を語りますよね。」とはある学卒院生から言われた言葉です。大学院に来た最初の頃は、現場で既に実践され成果をあげていることが研究テーマにされているのを見て、奇妙に感じました。しかしこれまでの、勘と経験則によって導かれてきた現場の実践に理論が結びつくことで、根拠と成果の関係が見えてきました。理論は、未来だけでなく過去の実践も支えてくれることに気づきました。
そして大学院で出会った理論を、現場でどのように形にしていけるのか。今度は、限られた資源の中で工夫を重ねてきたこれまでの経験が役に立ちました。実践が理論を支えることができると気づきました。教職大学院はまさに「理論と実践の往還」の場であり、学卒院生(理論)と現職院生(実践)の交流の場でもありました。
研究と現場の接続
オンライン授業と課題でパソコンに向かい続け、慣れない論文や学術本を読み、研究を形にしていくことは、決して楽だったわけではありません。そんな時、勇気づけられたのは、職場の仲間や教え子たちの応援でした。ここでも実践が支えてくれました。
夢のような大学院生活でしたが、今は現場に戻ることが楽しみです。現実の重さを前にして、自分がどうなるのか。教職大学院の2年間が、研究世界と現場の接点としての自分を支えてくれると思っています。