Vol.059図画工作の授業におけるアクティブ・ラーニング①
図工はアクティブ・ラーニングなの?

2018.07

 「アクティブ・ラーニング」という言葉が聞かれるようになったころ、図画工作(以下、図工)の先生方と話をすると「図工ってそもそもアクティブ・ラーニングだよね?」と言われることがありました。確かに図工の授業では子どもたちは材料や場と関わって活動をし、学んでいますが、果たしてそうなのでしょうか?

 私は毎日図工の授業を行っていますが、「今日の授業は全部うまくいった!」と感じることは、恥ずかしながら年に数回しかありません。材料の渡し方、場の設定、子どもへの声かけなど、授業の後に毎回反省することばかりです。うまくいった時の授業は、まず子どもの表情と子どもからでてくるエネルギーが違います。いろいろな場所で「いいこと考えた!」という声が聞かれ、子どもの「こうしたい」という思いがスムーズに広がって、試したり、それを鑑賞したりする中で「つくること自体に喜び」を見付けています。

 そう考えると、「図工だからアクティブ・ラーニング」ではなく、子どものもつエネルギーがすべて引き出せるような活動、何度も思考しながら自分の思いを表現し、新しい価値を見付けていけるような活動になったとき、初めてアクティブに学習できたということになるのだと思います。

 先日、「むこうとこっち」という題材を2年生と行いました。初めに、体育館に貼られた透明ポリシートの周りを歩くことから始めます。いつもとは違う空間の体育館を見るだけでなく、ポリシートを挟んだ「こちらとあちらの空間の違い」のようなものを感じる時間になります。そこに白い紙を好きなように切って貼っていきます。貼る形も場所も子どもたちに選んでもらいました。友達が貼った形を見てそれに合うように形をつくる子、ずっとあちらとこちらの世界の関係を楽しんでいる子、全く気にせず黙々と自分の世界を表現する子など、子どもの活動は様々ですが、つくりながらイメージを広げ表す中で、身近な「もの」から新しい「こと」が生まれていました。

 この授業で大事にしたことは「つくる」と「見る」を同時に行い、子どもの発想を刺激したことです。思考がアクティブになるためには、自分のやりたいことが安心して試せ、それを様々な角度から見て価値付けられる環境を保障してあげることが大切です。教師が進めやすい授業ではなく、子どもの思いや活動を丁寧に見取り、認めてあげられるかを常に考え、授業改善を行った先に、本当の意味でのアクティブに学ぶ姿が広がっていくのだと思います。

東京都板橋区立板橋第六小学校主任教諭 杉山聡
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