Vol.058社会の授業におけるアクティブ・ラーニング②
調べたことを整理する関連図づくりと、思考を深めるビデオ資料

2018.06

 今回は、2012年(東日本大震災の翌年)の実践、5年生「情報ネットワークを防災に生かす」を紹介します。

 当時、私たち人間の想定をはるかに超えた自然災害を目の当たりにし、大人に限らず子ども達も大きな衝撃を受けました。私は、このことを衝撃として終わらせず、何か学びに活かせないものかと思い、冬休みに被災地を訪れ、いろいろな方にお話を伺いました。その中で実感したのは、「情報はライフラインである」ということでした。この「情報」を一人一人に切実感をもって捉えさせ、深く思考させていく手立てとして、「関連図」づくりを取り入れました。

関連図をもとに深める

 単元の導入では、自分自身がその場にいたら、どのような情報を必要とし、どのように情報を得ようとするかを考えさせました。そして、インターネット(総務省消防庁や気象庁のホームページ、防災情報に関する行政の取り組みなど)を活用して調べさせ、関連図に書き込んでいきました。後で見てわかりやすいように、情報の内容は水色、それらを得られるメディアをピンク、国や自治体及びその機関の名称を赤で色分けさせ、情報経路を矢印で結ばせました。調べた内容を関連図にまとめていくことによって、知識が整理され、情報ネットワークの全体像が視覚的に捉えやすくなりました。関連図から読み取れることを自分の言葉で文章にまとめたり友だちと話し合ったりする中で、情報通信ネットワークの利便性や、それによって私たちの生活が守られていることを理解していきました。

子どもが作成した関連図

 単元の終盤では、このことをさらに深めていくために、被災した方々が情報について語るビデオを見せました。あの日、情報の発信元ともなる地方行政施設も流されてしまい、子ども達が調べたようなすばらしい情報ネットワークが活用されることはありませんでした。全く情報が得られない状況の中、人々は掲示板を作って貼り紙をするなど自分自身が情報の発信者になったり、訪ね歩いて安否を確認して回ったりして必死に情報を手に入れようとしていたことを、ビデオ資料から知ります。子ども達は、東京に住んでいてもとても怖い思いをした自分自身の体験に照らし合わせ、「もし自分がその場にいたら、」と語り始めました。導入時と同じ問いに立ち返り、情報が自分たちのくらしにとって欠かせないものであることをより深く感じ、そしてその情報を有効に活用したり適切に判断したりしていくことの大切さを考えることができたと思います。

ビデオ資料

 あれから7年が経ち、情報ネットワークシステムもさらに大きく進歩しました。一方でSNSの進歩とともに、未確認情報やフェイクニュースが出回るようにもなりました。情報は訂正、修正が加えられ更新されていくものです。正確な情報を得て活動していくためには、出所がどこか調べ、冷静に自己判断し取捨選択していく視点をもつことや、自分から情報を更新し続ける姿勢が必要となります。

元東京都公立小学校教諭 鈴木有紀
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