Vol.114宇宙教育という手法①
JAXAが広げる宇宙教育

2018.06

 宇宙は子どもたちの心をワクワクさせる魅力があります。宇宙の謎は彼らの好奇心や想像力をかきたて、人類の宇宙への挑戦は冒険心を刺激します。そのような心を育てるため、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙探求や宇宙開発で得られた知識や技術などを教育に活かしてもらうことを、JAXA宇宙教育センターでは目的にして活動しています。

 我々は、“好奇心”と“冒険心”の他にもう1つ、子どもたちの人生が輝くために大事なものがあると考えています。それは、好奇心や冒険心の対象へとたどり着くための「何かを作る」という”匠の心”です。これら3つの心は、子どもたち誰しもが持っているもの。 その心にいったん火がつけば、大人が手助けせずとも自らその探究心を駆使して、知識や経験の輪を広げていきます。だからこの最初のきっかけ作りを大切にしたいと考えます。そして、その礎に”いのちの大切さ”があってこそ、これからの地球を担う大きな力となっていくのではないかと考えるのです。

 我々は学校教育や社会教育を支援する活動を主としており、必要に応じて国際的な教育活動の支援もしています。中でも学校の先生方に直接関係するのが、普段の授業に「宇宙」という素材を使ってもらうために、その活用方法を考える教員研修や、実際にJAXA職員と先生で一緒に授業を考える授業連携の取り組みです。

 そこでよく聞く意見として「宇宙のことはよく分からないから・・・」というものがあります。しかし、我々が推奨する宇宙教育は「宇宙のことに詳しくなる教育」ではなく、「宇宙を素材にすることで授業の幅を広げる教育」なのです。例えば、家庭科の栄養の単元で宇宙食を利用したり、道徳の題材として、「はやぶさ」の資料を活用したりします。

 このようにいろいろな教育活動に宇宙を活用してもらうことによって、宇宙に興味を持つ子どもだけでなく、食事に興味を持ったり、さらには英語の学習を積極的に取り組む子どもがいたりと、いろいろな興味・可能性につながっていくのです。

 宇宙開発も宇宙好きだけでは成り立ちません。宇宙をきっかけに、多くのことに興味を持つ、そのような子どもが増えてほしいと願っています。それと同時に、先生方にも「宇宙教育」という手段があることを知ってもらいたいと考えています。子どもと同時に先生の心にも火をつけ、今後の教育活動の選択肢の一つにしていただければと思います。

JAXA宇宙教育センター 主事
松原 理
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