Vol.054子どもの眼が輝く!体育授業におけるアクティブ・ラーニング②
1年生の体育授業(リレー遊び)から

2018.04

 Elements vol. 053で述べた体育授業におけるアクティブ・ラーニングの3つのポイントについて、1年生のリレー遊び(折り返しタイムアタックリレー)を紹介しながら具体的に記します。

1 「折り返しタイムアタックリレー」について
 折り返しタイムアタックリレーは、決められた時間内にゴールすることを目標にして課題を解決したり、集団で達成したりすることをチームで目指すリレー教材です。オーダー(走る順番)、直線の走り方、折り返しポイントの曲がり方、バトンパス(リングバトンを使用)など、いくつかの課題についてどうしたらよいか学び合うことができる教材です(図1)。

図1 折り返しタイムアタックリレーの場

2 子どもが主体的に粘り強く取り組むことができる教材、課題設定をすること
  本教材では、忍術学校のストーリーを仕立てて、思い切り走りたくなる授業の雰囲気づくりに加えて、従来の折り返しリレーに見られる競争型だけでなく「時間内にゴールする」という集団達成型のタイムアタックリレーを取り入れます。また、チームのみんなで話し合い、時間内にゴールできれば折り返しポイントの距離をさらに伸ばすことができるという、発展性のある教材づくりをします(図2)。
そのことによって、チーム新記録を目指して「どうしたら、ゴールできるだろう、距離を伸ばせるだろう。」と、より自発的に個人や集団での課題解決学習を促すことができます。

図2 折り返しポイントの調整
(チームで話し合い、ポイントを伸ばすことで、走る距離が長くなる)

3 課題解決に向けて仲間との対話等を通して自己の思考を広げること
 1年生では、まず、ペアに「話して伝える」ことから振り返りをします。また、1年生の無自覚な気づきをさらに広げるために、教師は「もう少し詳しく教えてね、カーブをどんな風に曲がれば良いのだろう。」と、個人やチームの考えられるいくつかの課題から意図的に教師から発問をします。そのことによって、1年生であっても、友達から教えてもらってできた、分かったなど自分の思考を広げることができるのです。

4 試行錯誤を繰り返しながら、より深く学び、解決することができること
 ペアで話したことを持ち寄って「もっと良い解決方法はないか」と、集団(チーム)に広げることができる話し合いをして、思考をより深めることを保障します。兄弟チームを設定し、互いに見合うような場面もあるので、1年生であっても一緒に運動すること、話し合うこと、学び合うことが楽しいと思える人間関係づくりもできるのです。

5 「何を学ぶか」そして「どのように学ぶか」を積み重ねるカリキュラム・マネジメント
 このように、体育の学習の入門期である1年生であっても、課題解決に向かって自分の気づきや考えをもとに仲間とともに意欲的に学ぶことができます。体育授業づくりではこれまでと同様に「何を学ぶか」というカリキュラム構成も大切ですが、アクティブ・ラーニングの授業を実現するには「どのように学ぶか」をしっかりと積み重ねることができるカリキュラム・マネジメントがより重要となるでしょう。

東京学芸大学附属大泉小学校教諭
松井 直樹
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