Vol.051自然を思う気持ちを教える

2018.03.

 環境問題と言われると、多くの事例が思いつくのではないでしょうか。地球温暖化に始まり、大気汚染、水質汚染、砂漠化や最近では外来種といった問題も新聞やテレビでよく目にすることと思います。またその一方で、環境への負荷が高いと思っていてもついついやってしまうことや、生活の質を落としてまでもは我慢できないと思ってしまうことも、多々あるのではないでしょうか。

 人は自然がなければ生きていけません。しかし、都市部で生活する子どもたちを中心に、少し前の世代のみなさんが当たり前に経験してきた、虫取りや川遊びを経験したことがないという話も珍しくなくなってきました。学校の先生方からしても、自然を思う気持ちを「教える」ことが難しいという実感があるのではないでしょうか。いくら自然の仕組みを教えても、いくら美しい自然の映像を見せても、やはり実際に経験することにはかえられないのです。地球に大きな危機が迫っているにも関わらず、なかなか実感が持てず行動に移せないことも、この自然での原体験が足りないのではないかということもよく聞きます。

 私が勤務する中学校では総合的な学習の時間等を活用し、森林保全の活動に参加しています。いわゆる森づくりというものですが、みなさんは「森づくり」というとどのような活動を想像されますか。馴染みのある言葉では林業です。その生産物といえば木工製品ですよね。小学校や中学校の授業で扱う木工というと、ある程度プレカットされた木材を使い、説明書通りに本立てや、ちょっとした椅子をつくるという活動だと思います。ですが、森(に出なくても)や公園などに立っている「木」と、目の前にある「板」になった木との間にはどんな工程があるのかをご存知でしょうか。素材としての「木」から、人が使うための道具としての「板」になるためには、その間に森から運び出すだけでなく、乾燥させたり、板にする製材という工程があったりするのです。ただ、そんな大掛かりなことだけでなく、もっと身近なところから目を向けてみましょう。

 例えば、切ったり拾ったりした木からどのようなことができると思いますか。ハイキングなどをしていたら、杖とかになってくれそうですね。木によっては、釣竿代わりになるかもしれません。

 WildMindGogo!のサイトにある、「ブッシュクラフト入門#8 まわりにある素材でトング(火箸)を作ろう!」では、焚き火で使えるトングの作り方を紹介する記事があります。うちの生徒たちも焚き火が大好きです。キノコについて詳しい人が取ってきたキノコ(詳しくない人が取ったキノコは食べてはいけません)を焚き火で焼いて醤油を垂らして食べたときの感動は、ファストフードやコンビニでは体験することができません。そのようなときに、このトングはかなり役に立ちます。また、野外活動のお弁当のときに箸を忘れた!なんてことになっていても、「自分で削って食べよう」と言われている生徒もいます。「枝を削ってお箸をつくろう」では、まさにこの姿が描かれています。

東京学芸大学附属小金井中学校教諭
宮村連理
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