Vol.048表現の授業づくり②
わたしたちの音楽会~5、6年生の器楽合奏~

2018.02

 「表現と鑑賞の一体化」は、私自身が学生の頃音楽教育の授業でよく耳にしたり、学んだりしたものです。その時は言葉尻しか理解していなかったことを反省したのは5、6年生の合奏の活動でした。

 本校では学校行事としての展覧会や音楽会はなく、5、6年生の音楽の学習のまとめとして全校児童に器楽合奏を聴いてもらう機会を設けています。この活動では、子どもたちと選曲から話し合い、指揮も子どもたちの中から選出します。「わたしたちの発表会」というテーマで行っており、いかに自分たちで演奏会をつくりあげていくのかということを大切にしています。

 昨年度より本校の3年生以上の音楽科を担当して、現在までに5、6年生1回ずつ発表会を終えました。この題材を通して、いい選曲や演奏を目指していくためには鑑賞の力が大きく関わっていることを実感しました。クラスで曲を決めていく過程、指揮者が演奏をまとめていく過程、演奏者が自分や友だちの演奏を認知していくそれぞれの過程で、いつもポイントになることは“何をどのように聴いているか”ということだと考えました。そして、それを支えているものは子どもたちが何を表現したいかという想いなのです。それこそが私が実感した、「表現と鑑賞の一体化」です。

 今年度の6年生が《交響曲第9番「新世界より」》を選び、ある程度まで弾けるようになったところで、曲の解釈を行いました。すると、自分たちなりの演奏をしたい、より良い演奏をしたいという想いから、原曲を聴いたり、楽譜を見たり、調べたりしながら、曲の魅力を探っていきました。そして、原曲をくりかえし聴いたり、演奏したいイメージを音にしていくったりする過程の必要性を子どもたち自身が感じていきました。本番前の練習では、表現したいことを最後まで追求する姿がみられ、そのクラスだからこそのできる演奏をみんなでつくっていきました。本番の演奏も心に残っていますが、毎時間音楽室で共有した時間こそかけがえのないものだと、この実践を通して感じました。

5年生の合奏の様子

 子どもたちにとって、将来どのような形で音楽と関わっていくかはそれぞれですが、いい表現者や聴衆であって欲しいと願っています。

東京学芸大学附属世田谷小学校教諭
森尻 彩
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