Vol.047表現の授業づくり①
お話を音にすると…〜音で物語を表現する子どもたちの姿〜

2018.02

 3年生での音楽づくりを考えた時、大切にしたことは、“まずは音で遊んで欲しい”ということです。本校は3年生から音楽専科との授業が始まり、音楽科のカリキュラムもそれをふまえてつくり、研究を重ねています。初めての音楽づくりの題材となるのが今回の活動であり、特に重要だと感じた点は教材と導入でした。遊ぶことが日常にある子どもたちに、まずは「自由に」音で遊ぶことを題材の導入としました。その中で自由の楽しさややりにくさを経験し、音楽づくりにおける、制約があるからこその楽しさに気づいていけるような展開を考えました。

 題材の内容は『じごくのそうべえ』(童心社)の1場面にグループで音楽をつけるというものでした。この題材を行うにあたり、常時活動でリズム遊びやリコーダーでの音楽づくりを行ったり、司書教諭に読み聞かせをしてもらい、本の1場面から聴こえてくる音を即興的に表現する活動を行ったりもしました。教材を『じごくのそうべえ』に決めるまでは図書室に何度も行き、司書教諭とも話を重ね、本を選定しました。子どもたちが本から聴こえてきた音をつくりたくなったり、多様な表現や友だちの表現から刺激を受けられたりすることができる教材を探しました。

 導入での読み聞かせで、物語に引き込まれた子どもたちはそれまでに身につけた少しの技と遊び心でお話の世界を表現していました。しかし、最初は色々なことを試して楽しんでいても、自己満足や達成感はあまりなく、もの足りなくなっていきました。そこで音を出すものを限定したり、長さやグループ内での役割を決めたりして、音楽を少しずつ構成していくことで、次の楽しみを見つけていきました。そして、それぞれのグループでお話の世界を音で表現することができました。

「場面を見ながら音を出している様子」

 教材を吟味し、子どもたちがお話から音を想像し、それを表現したくなるような導入を行ったからこそ、その後の学びの発展や収斂も深まりがみられたのだと感じています。題材を通しての子どもたちの表情や表現は、忘れがたいものばかりです。

東京学芸大学附属世田谷小学校教諭
森尻 彩
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